油山寺(静岡県袋井市)|眼病平癒と癌封じで知られる遠州の霊場

1. 歴史・由緒
油山寺(ゆさんじ)は、静岡県袋井市に位置する真言宗智山派の古刹で、正式には「医王山薬王院油山寺」と称します。
創建は大宝元年(701年)で、奈良時代の高僧・行基によって開かれました。
行基は本尊として薬師如来を奉安し、人々の無病息災と穏やかな暮らしを祈願しました。
寺名の「油山寺」は、かつてこの地に油が湧き出ていたことに由来しています。

 

天平勝宝元年(749年)、孝謙天皇が眼病を患った際、油山寺の「るりの滝」の水で目を洗い、病が快癒したと伝えられています。
この出来事から、油山寺は「目の霊山」として知られるようになり、眼病平癒の祈願所として多くの信仰を集めるようになりました。
その後、鎌倉時代には源頼朝が眼病平癒の御礼として三重塔と薬師堂を寄進し、戦国時代には今川義元が薬師如来の厨子を奉納するなど、歴代の武将や大名たちの厚い信仰を受けてきました。
江戸時代には徳川家をはじめとする多くの諸大名の保護を受け、寺勢を拡大しました。
明治時代には、廃城となった掛川城の大手門が山門として移築され、現在も国指定重要文化財として保存されています。
1300年以上の歴史を持つ油山寺は、眼病平癒や病気平癒の霊験あらたかな寺として、今日も多くの参拝者を迎えています。

2. 境内の建造物、人気の参拝場所について
油山寺の境内は、豊かな自然に囲まれた広大な敷地を有し、多くの歴史的建造物や文化財が点在しています。

山門(国指定重要文化財)
山門は、元々掛川城の大手門として万治2年(1659年)に井伊直好によって建てられたものです。明治6年(1873年)に掛川城の廃城に伴い、当時の城主・太田備中守が眼病平癒の御礼として油山寺に寄進し、移築されました。間口約9m、奥行約4.5mの櫓門で、前後に庇屋根がある珍しい構造を持ち、壮大で堂々とした造りが特徴です。

 

三重塔(国指定重要文化財)
源頼朝が眼病平癒の御礼として寄進した三重塔は、安土桃山時代の三名塔の一つに数えられています。高さ約23mの朱塗りの塔で、内部には秘仏・金剛界大日如来が安置されています。

 

薬師堂(県指定重要文化財)
薬師堂は、三重塔とともに源頼朝が寄進した建物で、堂内には今川義元が寄進した金色の薬師如来厨子が安置されています。この厨子は百年に一度だけ開扉される秘仏で、眼病平癒や病気平癒のご利益があるとされています。

 

がん封じ六角堂(十一面観音)
がん封じ六角堂には、山主が霊山の全験力を込めて開眼した十一面観音が祀られています。がん封じ、手術成功、再発防止、転移予防の誓願を立て、多くの参拝者が祈願に訪れています。

 

るりの滝
るりの滝は、孝謙天皇が眼病平癒のために目を洗ったとされる滝で、清らかな水が流れ落ちる様子は訪れる人々の心を癒します。滝の周辺は自然豊かで、四季折々の風景が楽しめます。

 

その他の見どころ

境内には、不動明王を祀る宝生殿、江戸時代中期に建てられた書院(県指定重要文化財)、250年以上前に建てられた方丈(県指定重要文化財)など、多くの歴史的建造物があります。
また、茶祖・栄西禅師の像や、弘法大師ゆかりの御霊杉(県指定天然記念物)なども見どころの一つです。

 

3. 癌封じ・病気平癒の御利益
油山寺は、眼病平癒で広く知られる寺院ですが、近年では「がん封じ」「病気平癒」の祈願所としても多くの信仰を集めています。
これは本尊である薬師如来が“医王”と称され、あらゆる病を癒す仏であるとされていることに由来します。
薬師如来のご利益は、身体の不調だけでなく、心の病や不安、人生の悩みに対しても作用するとされ、多くの参拝者がその慈悲の力を求めて訪れます。
特に注目を集めているのが、本堂の横に建つ「がん封じ六角堂」です。
この堂には、山主が祈りとともに開眼した十一面観音菩薩が祀られており、がんに関わる様々な願いを込めた祈祷が行われています。
がん封じ、手術成功、転移防止、再発予防といった具体的な誓願が掲げられており、本人だけでなく家族や知人の健康を祈願する人も多く見られます。

 

油山寺の十一面観音様はその強い力を「がん」のみにお使いになられます。
参拝者は六角堂の前で静かに手を合わせ、設置された護摩木に願いごとを記して奉納することで、病の克服や心の平安を祈ります。
油山寺は体調の不安や医療との向き合いに悩む方にとって、精神的な支えとなる場となっており、「がんが寛解し、今でも毎年お礼参りをしている」といった体験談も寄せられており、継続的な信仰の対象として大切にされています。
さらに、本堂裏手にある「るりの滝」は、孝謙天皇の眼病平癒の伝説に加えて、病を流し去る清めの場としても信仰されています。滝の水は境内の手水やお守りの清めにも用いられ、その霊力に触れようと訪れる人々が絶えません。
このように油山寺は、仏の加持を通して、病と向き合う人々に「安心」と「前向きな気持ち」を与える場として、多くの人にとっての“心の支え”となっています。
観光や紅葉目的で訪れた人が、がん封じの信仰に触れ、思わぬ形で心を癒されて帰るという例も少なくありません。

3. 所在地・アクセス
○所在地:静岡県袋井市村松1
○アクセス:
🚃 電車でのアクセス:
・JR袋井駅より車で約10分、JR新幹線掛川駅より約20分
車でのアクセス
・東名袋井インターより車で約15分、新東名森掛川インターより車で約20分
○駐車場:あり(無料)
○公式サイト:https://yusanji.jp/

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